昨今、世界中で、心や意識を研究する脳科学(brain science)や神経学(neuroscience)に大きな関心が集まっています。お腹(gut)の神経系は、食物を生存のエネルギー源として、消化・吸収・代謝・同化・異化・排泄するために、自律的に営まれ、そのニューロンの数は脳に匹敵すると言われています。お腹を第2の脳(Second Brain)と称される由縁です。
しかし、これまでは、お腹の神経系に対する研究は十分であったとは言えません。お腹に心や意識があるのかどうかは勿論判っていませんが、お腹の神経系が関与する病気として、ゲップや胸焼け、胸痛を主とする胃食道逆流症(GERD)、胃もたれ、心窩部膨満感、心窩部痛を主訴とする機能性胃腸症(FD)、そして定期的に腹痛、下痢、便秘を繰り返す過敏性腸症候群(IBS)などがあげられます。
これらの病気を有する患者さんは、欧米諸国をはじめ、我が国でも多数居られ、日々の悩みのために生活の質を著しく落としています。その原因は、消化管局所の運動制御に関わる腸管神経叢の異常が主とされ、また消化管内分泌系と免疫・微小循環系の異常が関与すると考えられています。更に、腸管神経系と脳との相互相関の異常があって、肉体的、精神的ストレスが関与すると考えられています。この他にも肝臓や胆膵疾患のお腹全体の疾病にも、腹部神経系が微小循環系や免疫・内分泌系を介して、強い影響を与え、疾病の進展、増悪に関与していると考えられています。
本学会(日本Neurogastroenterology(神経消化器病)学会)は、ストレスで心が痛み、腹が痛み、障害を生じる実態と機序を明らかにして、その防御能とQOLを高めるために、平成14年に設立されました。本学会構成員は、臨床・基礎医学者のみならず、薬・理工・獣医学・農学系の研究者の方々にも参加して頂き、境界領域の新しい学問分野として発展させたいと願っております。この分野に興味ある方々の御参加をお待ちしております。
佐藤信紘 |