学術集会・セミナー

日本神経消化器学会理事長の挨拶

東海大学消化器内科
峯 徹哉

  この度日本神経消化器病学会の理事長になりました東海大学消化器内科の峯徹哉です。さて日本神経消化器病学会とはどういう学会とお思いでしょうか。大まかには、人間の幸福感とは快食、快便、快眠の3つの要素が満たされればある程度達成できると思われています。これらを追求することが本学会の目的であると思われます。従来から、日本の消化器の分野の診療・研究は形態学が中心でした。病理診断・血液結果・画像診断より診断されており、それ以外は気のせいと言う言葉で片付けられていました。しかし、最近の疾病は形態学だけでは診断できないことが多く、消化器疾患の病名として、機能性ディスペプシアという疾患が認められるようになりました。しかも従来と違ったこれらの疾患にあった様々な創薬が行われています。我々の学会の統計でも、日常診療の中でこれらの疾患の患者がかなり存在する事もわかっています。しかも、患者の多くはその疾患を主訴に来院することはありません。そのために従来はこのような患者はあまり多くはいないと思われていました。しかし、実際には非常に多くの患者がいたわけですが何故診断できなかったのでしょうか。今までは肉眼的に異常、いわゆる形態学的な異常、がなければそれは気のせいであると片付けられている事が多かったわけです。最近、そのような疾患がかなり多く集まり、しかも消化器疾患のひとつであることが判明したわけです。しかもその判定基準までできており、診断も非常にやりやすくなりました。一例をあげますと、内視鏡で慢性胃炎と診断されたが心窩部痛あるいは飽満感が続いている。原因としては慢性胃炎の急性増悪と今までは呼ばれていました。このことは内視鏡では診断できないし、他の診断方法でも難しいと思われていました。以前は消化管運動の問題ではないかと考えられ、胃の排出時間の遅延ではないかと考えられました。しかし、アセトアミノフェン法や13C sodium acetateを用いた呼気テストを行っても消化管の運動異常は約30%位の患者しか証明できませんでした。また、このような患者に胃排出を促進するように薬剤を投与しても、症状はあまり改善しなかったという結果も示されています。これらの結果を総合してもこのような症状が何故出るのか、未だに明確な答えは出ておりません。これらの疾患の解明は主にこの学会が中心となって解明していく必要があります。また過敏性腸症候群もこの学会が主に担当する疾患であると思われます。実際、かなりの数の患者が過敏性腸症候群で悩んでいます。自分自身が過敏性腸症候群と知らない患者もたくさんいます。この理由は至って簡単な理由ではないかと思われます。即ち、症状も下痢・便秘で日常的によく見られる現象です。しかも若い頃から続いている症状であるので、自分自身の体質ではないかと思い込んでいます。症状も日によって変わることが多い。これらのことから、自分は疾患に罹っているのではなく単に自分自身がもっている体質にしか過ぎないと思い込んでしまうのです。しかし、これらの症状は生活の質をかなり落としてしまっていることに気がつかないのです。例えば、下痢・腹痛がひどくて通勤も大変でしかもみんなと一緒にバス旅行にいけない。仕事の負担だけではなく体への負担もあり生活が大変であり、更にそれが症状の悪化に繋がっていくことになります。従来の学会の立ち位置については、多くは形態学で異常があるものを診断治療してきたわけですが、この学会の目指すところはこれから増加して行くに違いない機能性消化器疾患を標的とする学会であると思います。まず私の仕事と考えているのは、このような考えを多くの方に理解していただき仲間をふやしていくことが重要であると思われます。またそれと同時に市民に啓蒙活動を行っていき、疾患を診断することの有用性を明らかにしていきたいと存じます。
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